研究班について
研究班について
自己免疫疾患は、免疫系が正常に機能しなくなり、体が自分の組織を攻撃してしまう病気であり、未だ原因は不明で治療法が確立していない難病の一つです。
免疫系は異物または危険な物質を認識すると、その物質から体を守ろうとします。このような物質には、細菌、ウイルス、蠕虫などの寄生虫、特定のがん細胞などがありますが、このほかに移植された臓器や組織を異物と認識してしまうこともあります。これらの物質には、免疫系が認識し、免疫系による反応を刺激する分子が含まれています。これらの分子を抗原と呼んでいますが、抗原は細胞内にあったり、細胞(細菌やがん細胞など)の表面にあったり、ウイルスの一部であったりします。花粉や食物の分子などは、それ自体が抗原となります。
それぞれの人の組織内細胞にも抗原が含まれています。しかし、通常であれば免疫系は異物や危険な物質に対してだけ反応し、自己の組織の抗原には反応しません。ただし、ときに免疫系が正常に機能しなくなり、自己の組織を異物と認識して自己抗体と呼ばれる抗体や免疫細胞を産生し、これらが特定の細胞や組織を標的にして攻撃します。この反応を自己免疫反応と呼び、炎症と組織の損傷を引き起こします。こうした反応は自己免疫疾患の症状である場合がありますが、多くの人では作られる自己抗体の量がごく少量であるため、自己免疫疾患は起こりません。
代表者挨拶
自己免疫疾患とは、本来体外から侵入する異物に対して攻撃する機能(「免疫」といわれています)が、異常な自己免疫反応により自分自身を異物と判断し、攻撃してしまうことで発症する疾患の総称です。難病医療費助成の対象となっている、いわゆる「指定難病」の中に位置づけされており、以下のような特徴を持っています。
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1.発病の機構が明らかでない
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2.治療方法が確立していない
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3.希少な疾病である
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4.長期にわたり療養を必要とする
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5.患者数が人口の0.1%程度に達しない
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6.客観的診断基準が確立している
厚生労働省「自己免疫疾患に関する調査研究」班は、以下の7疾病を研究対象としています。
- 原発性抗リン脂質抗体症候群(PAPS) (疾患番号48)
- 全身性エリテマトーデス(SLE)(疾患番号49)
- 多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)(疾患番号50)
- 混合性結合組織病(MCTD)(疾患番号52)
- シェーグレン症候群(SS)(疾患番号53)
- 成人スチル病(ASD)(疾患番号54)
- 若年性特発性関節炎(JIA)(疾患番号107)
各分科会が、各々の担当疾患について、
- 診断基準や重症度分類の検証と改訂、国際分類基準の検証、関連学会承認獲得
- 診療ガイドライン(GL)の策定と改訂、関連学会承認獲得
- 臨床個人調査票の解析や検証による指定難病データベースの再構築
- 早期診断や診療施設紹介のための自己免疫疾患難病および移行期診療ネットワークの構築
- 難病プラットフォーム(PF)を利用した疾患レジストリの確立
- レジストリを活用したAMED実用化研究事業の獲得
- 血管炎班との共同で行うシステマティックレヴュー担当者の育成
- 患者会協同による公開講座の開催
を小児・成人一体的に行うことを目的としています。
本研究班の予定ならびに成果に関する情報を、このホームページを通じて全国の医療関係者の方、自己免疫疾患の患者さんやご家族の皆様に提供して参ります。どうぞ有効にご活用ください。
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)
自己免疫疾患に関する調査研究班 研究代表者
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座
森 雅亮
研究班の歴史
- 令和5年度~
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自己免疫疾患に関する調査研究班
研究代表者 渥美達也
- 平成30年度~
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自己免疫疾患に関する調査研究班
研究代表者 森雅 亮
- 平成29年度
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自己免疫疾患に関する調査研究班
研究代表者 上阪 等
- 平成23~28年度
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自己免疫疾患に関する調査研究班
研究代表者 住田 孝之
- 平成17~22年度
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自己免疫疾患に関する調査研究班
主任研究者 山本 一彦
- 平成11~16年度
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自己免疫疾患に関する調査研究班
主任研究者 小池 隆夫
- 平成5~10年度
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自己免疫疾患調査研究班
班長 宮坂 信之
- 昭和63~平成4年度
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自己免疫疾患調査研究班
班長 狩野 庄吾
- 昭和57~62年度
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自己免疫疾患調査研究班
班長 垣松 徳五郎
- 昭和51~56年度
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自己免疫疾患調査研究班
班長 堀内 淑彦
これからの研究で
期待されること
全分科会研究
- 臨床個人評価票を用いた疫学研究および難病PFにおける患者レジストリ研究により、政策研究から派生する治療薬開発等の実用化研究事業の萌芽が期待できます。
- 全国規模の専門家が自己免疫疾患難病および移行期診療ネットワークを構築したり、患者会と協同の公開講座を開催することで、全国の難病患者に正確で最新の情報を資することが可能です。
PAPS/SLE研究
- 関連学会承認の診療GLで診療が標準化されます。
- 腎臓学会と作成するループス腎炎管理GLでは慢性期管理も標準化されます。
- 継続課題である診療費用対効果の結果も至適治療の確立に役立ちます。
PM/DM研究
- 新国際診断基準が国内コホートで検証され、成人/小児の統合診断基準が策定されます。
- 新検査法導入に応じた診断基準改訂で、より適切な診断が担保されます。
MCTD研究
- 昨年まで旧班が作成した診断の手引きや診断基準などに新たな検証が行われ、新診療GLは成人/小児が統合され最新医療を反映したものとなります。
SS研究
- 新国際診断基準が国内コホートで検証され、成人/小児の統合診断基準が策定されます。
- 非特定疾患のSSでは、疫学調査を通じて臨床調査個人票が最適化されます。
ASD/JIA研究
- sJIA/ASDの病名と病態が整理され、2疾患の成人/小児GLが統合されます。
- 重篤合併症であるマクロファージ活性化症候群の管理法も標準化される。難病指定された関節炎型JIAの妥当性検証による診療GLが作成されます。